今回から複数回にわたって、契約に関するテーマ(契約の成立、契約書の作成、契約内容の確認等)をいくつか取り上げ、Q&A 形式にてご説明したいと思います。
さて、初回である今回は、契約に関するテーマのうち、契約の成立に契約書は必要か、というテーマを取り上げたいと思います。

Q 契約の成立に契約書は必要か?
~メールのやり取りしかない場合でも契約は成立するか。契約書の作成が法律上要求される場合はあるか。~

A 原則として契約書がなくても契約は成立しますが、例外的に法律により書面の作成を要求される契約があります。

(解説)
口頭でのやりとりや、メールのやりとりだけでも、契約は成立します(申し込みと承諾が合致していることが前提となります)。書面がなくても契約が成立するということは、コンビニエンスストアやスーパーマーケットでの買物を想定いただければイメージしやすいと思います。
ただ、例外もあります。身近な契約でいいますと、保証契約がそれにあたります。保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じないとされています(民法446条2項)。ほかに定期借地契約や定期借家契約も、書面によってしなければならないとされています(借地借家法22条1項、同法38条1項)。
また、契約書がなければ契約が有効とならないわけではありませんが、法律で契約書の作成が要求される場合があります。例えば建設業法では、建設工事の請負契約において、一定の事項を記載した契約書(電子契約を含む。)の作成が要求されています(同法19条)。そのほか、下請代金支払遅延等防止法で対象となる親事業者から下請事業者に対する発注に関して、一定の事項を記載した書面の交付が要求されています(同法3条)。
(作成:2021年3月12日 文責:弁護士櫛田博之)